2016年07月

香港で起きた雨傘革命は、まさしく香港の民主主義を中国から守るために必要だと判断した、学生を中心に起きたデモであり、香港の市民はそうやって、民主主義や言論の自由を守ろうとしているのである。しかしすでに中国は香港の新聞会社を買収するなどの工作を行っており、いずれ香港が中国の力に屈する時が来るかもしれない。香港を力でねじ伏せた後は、南シナ海を武力で実効支配し、対ベトナムや対フィリピンとの架空戦争に勝利することによって、南シナ海を丸々自国の領海に取り込んでしまうという魂胆が今の、中国の動きから見て取れる。そしてその後は、台湾と沖縄に手を出してくると予想できるが、台湾は蔡英文というしっかりした総統が誕生したので、まずは尖閣諸島あたりを押さえて、台湾を南シナ海との挟み撃ちにする作戦に出るのではないだろうか。中国の経済がこのまま内部崩壊の方向へ向かへば、いずれその不満のはけ口を国外に戦争という形で吐き出すことになるので、この辺は油断が必要である。

今の世界情勢を引っ張れるのは、アメリカの新しい大統領か、いやそうではない。クリントンにしてもトランプにしてもやはり完璧というには程遠いリーダー像である。79年にイギリス首相に就任した、マーガレット・サッチャーは、自由と自助努力による経済学を推し進め、以来イギリスは30年以上にわたって、構造改革路線を続けてきたのであり、その結果今のイギリス経済は、成長率でドイツを上回り、失業率では、先進国で最も低い水準となっており、非常に強い経済が出来上がっている。政府に頼る前に、まずは自分自身を助けることを大事にした経済政策は、英国病と言われたイギリス経済を見事に立ち直らせ、強い経済による安定した雇用を作り出すことに成功したのである。このようなサッチャーの行ったおもな政策は、規制緩和と労働組合の解体であって、経済を強くするための、まさしく構造改革であったと言えるだろう。今の世界情勢に必要なのもサッチャーのような強いリーダーであり、そういった人物が今の時期に登場してくることができれば、国際情勢はもとより、国際経済まで導くことができるであろう。

日本を取り巻く環境が、きな臭くなってきた。今年一年かけて行われるアメリカ大統領選の時期に合わせて、いわばアメリカの政治空白ともいえるこの時期に、中国が南シナ海の領海宣言をしたり、新たな軍事基地をつくったりと、日本のシーレーンを封じ込める目的で、中国はやりたい放題である。日本としては、このまま中東からの石油輸入だけに依存していては、エネルギー安全保障にかかわるので、一刻も早く、ロシアからの石油や天然ガスの輸入を始めたり、アメリカからシェールオイルの輸入をもっと増やさなくてはいけないであろう。こういったエネルギーリスクを分散するためには、独自外交ができる力がなくてはならない。特にロシアとアメリカは対立関係にあるので、両方の国と対等に渡り合うためには、やはり日本は自主防衛力というものを持たなくてはならない。それは核武装ということも含めてであり、日本の安全が自国で保証できるようになってから、初めて独自外交というものは可能になってくるのである。

民主党のクリントン大統領候補は、副大統領候補にケイン上院議員を指名し、対トランプ戦に対して突入した。今のところ現実的な政策目標を掲げているのは、クリントン候補の方だが、支持率ではトランプ氏と拮抗しているので、大統領選は接戦となる可能性がある。クリントン候補は、夫のビル・クリントン元大統領の行った、民主党なのに共和党的な経済政策というものを行う可能性が高く、そういった意味で、何をやるかはある程度は予測できるという安心感があるが、トランプ候補の方は、まさしくトランプ政策を実行する可能性があるので、トリックスター的存在といえる。クリントン候補がトランプ候補に勝てないとしたら、それは政策をサンダース候補が主張していた、左寄りの経済政策や、外交安全保障に世論の声を気にして迎合し、自分の政策を曲げてしまうことであろう。サンダース氏は民主社会主義者を自ら名乗るくらいの、社会主義的な考えが強い人なので、この人の政策に軸足をずらすというのは、まさしくトランプ候補に負けるいちばんの原因となるであろう。そうならずに自分の政策を曲げずに訴えていけば、クリントン候補が大統領になるのが穏当だろう。

世界地図を眺めてみると、今最も不安定な地域というのは、中東や、ウクライナなどもそうだが、やはり経済力、軍事力、それから人口に置いて、存在感を高めている中国そしてその実質的な属国ともいえる、北朝鮮問題を抱える、東アジア情勢であろう。これらは皆、日本の安全保障に大きく影響してくる地域の問題なので、他人事ではない。上にあげた中国の存在感で、経済力だけは、昨年の6月の上海株の暴落以来、大幅に落ち込んでいるので、一つ警戒するものが減ったことになり、私もホッとしている。しかし中国は核ミサイルを数百発は日本の主要都市に向けて待機しているし、北朝鮮もまた、水爆実験に成功したと私は見ているが、このような軍事的な危機、特に核兵器による危機が日本には迫っているのであり、日本もこれに対抗して、自主防衛力というものをつけていかなくてはならないであろう。そしてそれは自衛のための核武装というところまで、踏み込んで考えなければ、日本人の生命と安全は守れないと考えていた方が、より安全は担保される。今アメリカ大統領選で、アメリカが自由に動けない隙を狙って、中国は南シナ海の領海を丸々手に入れるつもりでいるので、こういった政治的な空白を狙った行動に対処するためにも、日本独自の自主防衛力というものは必要なのである。

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