カテゴリ: 中東政治

トランプ大統領が、イスラエルの首都にエルサレムを認定するという演説を、アメリカ時間の6日に行うという報道が入ってきた。この問題に関しては、エルサレムはユダヤ人とパレスチナ人との間で、領有権をめぐって争いが第二次大戦後続いていたが、アメリカがイスラエル側の表明を出すことで一応の決着をつけようという試みだが、これがパレスチナ難民の理解を得られるかどうかが大きな焦点となるであろう。この問題はエルサレムという都市の宗教性にある。エルサレムやキリスト教、イスラム教、ユダヤ教の三つの宗教の発祥の地であり、イスラム教徒が支配する前には、ユダヤ教徒が支配しており、これは単なる歴史問題ではなく、宗教問題でもあり、解決の糸口が非常に難しい。ナチスによるユダヤ人の大量虐殺を得て、戦後のユダヤ人によるヨーロッパでのシオニズム運動などが起こり、英米がユダヤ人の国家建設を後押して、イスラエル建国に至ったというのが事の推移である。アメリカとしてはこのイスラエルとサウジアラビアが中東での同盟国であり、中東支配のかなめとして重視している国だけに、今回のエルサレムのイスラエルの首都認定も、現地に住むユダヤ人やパレスチナ人の理解が十分ではないままに、政治的意図で持って行われている事情の方が大きいといえるだろう。日本としては中東諸国と、ユダヤ人、キリスト教圏の、懸け橋のような立場に立てることが望ましいと私個人は思う。

今の国際政治を鳥瞰してみると、一番きな臭いのは明らかに朝鮮半島情勢であり、北朝鮮問題であろう。アメリカのトランプ大統領はティラーソン国務長官を解任する可能性が出てきており、着々と戦争の準備に入っているとみていいだろう。こちらの極東問題に対して、一方で中東地域から西アジア地域にかけての混乱もある。中東ではIS問題がだいぶ収束してきたが、シリア問題やイランの核開発問題、そして慢性的なイスラエルとパレスチナ問題など、まさに世界の火薬庫となっている。この背景にはイスラム教徒キリスト教の対立があり、共に一神教の教えが両文明の対立を招いているといえるであろう。また直接の国際情勢の悪化の原因は、アメリカのイラクからの米軍50万人の撤退であり、この中東からごっそり米軍が抜けたことにより、中東のみならず、西アジア、ウクライナなどの中央アジア情勢、中国、北朝鮮問題と、世界中にその火種が飛び火しており、やはり米軍のミリタリーパワーが中東からごっそり抜けてしまったことが多くの混乱を招いているとみていいだろう。北朝鮮と中東情勢は一見関係ないように見えて、実は米軍のユーラシア大陸におけるバランスオブパワーが崩れたという点では、両社はつながっているのである。米軍はアメリカの財政事情から、ユーラシア大陸の二つの地域で同時に戦争する力を失っており、中東か北朝鮮かを選ばなくてはいけないだろうし、まずは北朝鮮が喫緊の課題として、アメリカを始め、日本や韓国、台湾やフィリピンなどに襲いかかってくるであろう。

今の世界情勢で最も緊迫しているのは、北朝鮮問題だと書いたが、ここにキテ北朝鮮の動きが鈍くなってきており、日本やアメリカに対する挑発行為=ミサイル発射を行わなくなってきた。北朝鮮の狙いはアメリカ本土にまで届くICBM大陸間弾道ミサイルを持ち、アメリカを交渉のテーブルにつけることであり、動きが鈍くなったというよりも、今も刻々とミサイル開発を続けていると見る方が正確であろう。この北朝鮮問題以外にもう一つ地球規模で大きな国際問題はシリアやイランなどの中東問題であろう。アメリカはトランプ大統領就任後シリアにはミサイル攻撃をアフガニスタンにMOABという大型爆弾の使用を行っており、イランに対しては制裁解除の見直しを検討している段階であるが、今後は北朝鮮の核開発問題と合わせて、このイランの核開発問題がアメリカの頭を悩ませることになるであろう。アメリカはイランからの核ミサイルの発射を想定した、迎撃実験に成功しているが、アメリカの中東の同盟国のイスラエルも核兵器保有国であり、イランはこのイスラエルに対する抑止力として核を持つ気でいるかもしれないので今後の中東情勢からは気が抜けないであろう。

イランでテロがあったが、今中東ではこのイランを中心とするイスラム教シーア派の国と、サウジアラビアを中心とするイスラム教スンニ派の国で、主導権争いが行われており、これは単なる宗派間の対立だけではなく、オイルマネーもかかわっているため一層の深刻さが拡がっている。イランを中心としたパキスタンやシリアとの軍事同盟とサウジを中心としたエジプトUAE等との軍事同盟の創設が検討されているとの情報が入ってきているが、イランの方はバックに中国がおり、サウジの方はアメリカが支援するということで、中東にサウジを中心としたアメリカの支援を受けてNATO軍が出来るという構想があり、これは新たな世界大戦の前兆の一つとなるであろう。イランとサウジの争いを食い止めていたのが、イラクのフセイン政権だったのだが、アメリカによって武力で倒されてしまったために、イラクが空白地帯となり、中東情勢は悪化の一途をたどっている。やはり米軍は自ら始めた戦争にきちんと節目を付けるまでは、イラクから撤退するべきではなかっただろうし、イラク戦争自体が失敗であったといえるであろう。

サウジアラビアやエジプトなど中東5か国が、同じく中東国家のカタールと国境断絶を宣言し、今朝の新聞紙上に一斉にそのことが載っている。表向きはカタールがアルカイダなどのテロ支援国家という理由で、国交を断絶したが、キーワードはカタールは新イラン国家であることと、液化天然ガス産出量世界一と世界経済に与える影響が大きいということであろう。イラン問題は皆承知のように、イランはイスラム国家であり、大統領や議会の上にハメネイ氏が指導する体制ができており、これらは日本やアメリカの自由や民主主義とは価値観を異にする国家であり、カタールはそのイランと仲がいいとのことである。サウジアラビア側の思惑は対イランに対して強硬姿勢に出ていることと、オイルマネーを巡って、イランやカタールとマネー戦争を仕掛けるといことであろう。注目すべきはカタールはイスラム教スンニ派でサウジアラビアと同じ宗派であり、イランのシーア派とは違うということであり、非常に複雑な構造をこの問題はしているということである。いわばサウジの属国のような関係にあったカタールがサウジからイランに友好国を切り替えたということが、サウジの逆鱗に触れたということが今朝の産経新聞には書いてあるが、上記したようなイラン問題と、アメリカやロシアからオイルが採れるようになったために、国家収益が減っているサウジアラビアにとってのオイルマネー問題も大きに関係あるだろう。

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